小笠原惣領家流礼法

小笠原惣領家について

三十二世小笠原忠統宗家の足跡

忠統宗家は、「今まで世間で考えられている小笠原の礼法は窮屈で堅苦しい、形式だけが先に立ち、なぜそうするのかわからぬままに頭から押さえつけてきた点が目立ちます。家に伝わる古書や私が躾けられた経験では『礼儀とは相手への温かい心遣い、思いやりの心を、日本人特有の自らを抑制する美意識を通して、目立たぬ自然な形でさりげなく現していくもの』だといいます。そんな心と形の交流を大切にしながら、伝統の知識を活かし、現代にふさわしいマナーを身につけて欲しい」と強く希望しました。
また、礼儀や躾の空白が礼儀の荒廃をもたらしているのではないかと憂慮する一方、千年近い時を超え伝えられてきた礼法の一体系を埋もれさせすには忍びず、礼法を日本文化の財産の一つとして未来に生かし、門外不出で御止流であった家法の礼法を自分の代で世に出して一般に伝えることにより、日本人が失ってきた「日本の心」を礼法の面から少しでも復権できればという願いを込め、私たち弟子を取り直門として糾法の内の礼法を厳しくも丁寧に長きに渡り伝授し育ててくださいました。

常に心と形を重視し、相手に対する心遣いとそれを受け止める心遣いを大切に考え、日本人の「こころ」と「知恵」が脈打つ礼法の基本精神である「相手を思いやる心遣い」を、先ずは家庭の中に浸透していくことを足がかりに、私たち直門弟子を御供に昭和の中期から平成八年永眠なさる迄の間、小笠原惣領家の礼法普及に人生の後半において全力を注がれました。